代表あいさつ

株式会社イワタ
代表取締役社長 水野 昭

イワタは2020年11月で創業100年を迎えることになります。
この大きな節目を迎えることができましたのは、ひとえにこれまで支えていただいた皆さまのお陰と心より感謝申し上げます。

イワタはこの100年間、文字を取り巻く技術変化に加え、震災・戦争・オイルショック・バブル崩壊など厳しい情勢を背景にいくつもの浮き沈みを経験してまいりました。
しかしその都度、先輩諸氏による時代を先取りした発想と技術革新、そしてたゆまない努力と情熱で乗り切ってまいりました。
イワタの書体はすべてそうした前向きな努力を積み上げた結果だということを胸に刻みつつ、社員一丸となって今後も書体制作に全力を注いでまいります。
お客様との協同事業、いまだデジタル化していないアナログ書体の復刻、新しいフォント技術の取り込み、様々なフォントバリエーションへの展開、そしてまだ見ぬ理想の書体制作。
イワタにはやるべきことがたくさんあります。
これまで関わった、そしてこれから関わるであろうすべてのお客様とともに、これらの夢を実現すべくこれからの100年をともに歩んで参りたいと思います。
今後とも変わらぬご支援、ご指導を賜りますようお願い申し上げます。

イワタの歴史

  • 5月:第1回メーデー開催
1920大正9年
11月、岩田百蔵が京橋木挽町に岩田活版母型製造所と称して経営を開始。
  • 9月:関東大震災
1923大正12年
1924大正13年
「印刷雑誌」新年号に半頁の広告を掲載。
広告の効果で得意先が増大する。
当時の広告(凸版印刷㈱ 印刷博物館 所蔵)
1928昭和3年
上海「中華日報」「中国時報」から電胎母型受注。7ポイント~63ポイントの明朝体・ゴシック体各々一式の大量受注。
  • 3月:満洲国建国宣言
1932昭和7年
満州国から大量の母型を受注。受注総数は合計100万本以上となり、満州国中の印刷物はほとんど岩田母型製の活字書体により印刷された。
1933昭和8年

日本タイプライター製の万能活字鋳造機の母型を開発製造

森川龍文堂が宋朝活字を新刻、「龍宋体」と称す。母型は岩田活版母型製造所が製作。

  • 3月:東京築地活版製造所解散
1938昭和13年
1939昭和14年
龍文堂・森川健市(のちの岩田母型製造所大阪支店長)が、新聞本文用五号扁平活字を開発。母型は岩田活版母型製造所で製作した。
  • 12月:日本軍がハワイ真珠湾を攻撃(太平洋戦争勃発)
1941昭和16年
朝日新聞社が新五号扁平活字の採用を決定し、母型は岩田活版母型製造所に指定発注。この新五号偏平活字が好評を得て、全国の新聞社が採用した。明朝体とゴシック体およびルビ付き母型で一式2万本、100社を超える受注で大量生産体制をとる。
  • 5月:国家総動員法第6条の企業整備令発動
1942昭和17年
  • 年末には母型業者の多くが廃業
1943昭和18年
11月、海軍艦政本部の指定工場になる。海軍の暗号に使用する活字の母型の製作を命じられた。
  • 3月:東京大空襲
  • 9月:降伏文書に調印(太平洋戦争の終了)
1945昭和20年
  • 5月:日本国憲法施行
  • 11月:当用漢字告示
1946昭和21年
母型の製造工程を示すカタログ(1946年ごろ)
1947昭和22年

大森に新工場を建設し社員も増員。

10月、株式会社として法人化。商号を岩田母型製造所と称す。

岩田百藏と役員達
岩田母型製造所
岩田母型製造所の社員集合写真
1948昭和23年
弘道軒清朝体パンチ母型三号〜六号を神崎家の当主・神崎正助より譲り受ける(清朝体の創始者・神崎正誼の孫にあたる)。
  • 新聞段数改正、15段15字詰めとして、タテ0.088インチ×ヨコ0.110インチの偏平書体を採用。
1950昭和25年

3月、津上製ベントン彫刻機2台導入。母型業者として本邦初の導入。

新聞扁平活字を新刻し、朝日新聞東京本社を始め各主要新聞社へ電胎母型を納入。片平かな、和数字など頻度の高い漢字は、ベントン彫刻母型で新書体を発表。

ベントン彫刻機
1951昭和26年
新聞活字母型(1951)
1952昭和27年

電胎母型を主生産としたが、併行してベントン彫刻母型用各号数の岩田書体の開発を開始。

日立印刷所から8・9・10ポイントの明朝体ゴシック体合計2万本のベントン母型を受注。

図書印刷株式会社沼津の原工場の全ポイント制採用による3.5ポイント~28ポイント17種の明朝体ゴシック体教科書体各書体と欧文各書体などのベントン母型20万本を受注。

ベントン母型の得意先「受注簿」の作成開始(新聞社からの受注から納品までを示す記録)
1953昭和28年
龍宋体活字標本(1953)
1955昭和30年
事務器部門に進出し、タイプライター用活字やスーパー硬質活字の販売を開始。
活字母型書体標本(1955)
1959昭和34年
岩田母型活字書体見本(1959)
文字のよみかた(1959ごろ)
花形活字見本(1959ごろ)
1960昭和35年
書体見本(1960)
いろいろな書体(1960)
  • 10月:東京五輪
1964昭和39年
正楷書活字標本(1964)
1966昭和41年
文部省通達の書体に倣い岩田教科書体原字を作成。業界の標準書体に認可された。
常用漢字表(1966)
4,000字表(1966)
1967昭和42年
10,000字表(1967)
1969昭和44年
事務機器、会計機、加算器、漢字テレタイプの文字部分の金型と特殊活字および欧文タイプライター等の鉄活字の製造・販売を開始。
  • 石油ショック
1973昭和48年
1979昭和54年
ベントン用アナログ原字をベースに、デジタル文字フォント開発を行い、日立製作所(中央研究所内のデザイン研究所)から48ドットゴシック体のJISコード一式を受注。当社初のデジタルデータ販売となる。
活字書体(1979ごろ)
岩田母型総合カタログ(1979ごろ)
  • 10月:常用漢字告示
1981昭和56年
正楷書活字表(1981)
会社案内(1985)
  • JIS X 0208:1983
1983昭和58年
書体見本帳
ドットフォント、アウトラインフォントのカタログ
  • 3月:青函トンネル開通
1988昭和63年
4月、デジタル文字部門を独立させ、(株)イワタエンジニアリングを山形県天童市に設立。URW(独)のフォント作成ツールIKARUSを導入してドットフォントとアウトラインフォントの制作を開始。
山形事業部の制作室
  • Windows3.1
1992平成4年
  • Windows95
  • 阪神淡路大震災
1995平成7年
戸籍システム用にイワタ中細明朝体を開発。多くの省庁および自治体に採用された。その後、明朝・ゴシック両書体にわたりJIS標準文字セット以外にJIS X 0212の文字セット、JEF(富士通)、JIPS(NEC)、KEIS(日立)の拡張外字を含めて各々3万字以上の文字をIKデータの形式にデジタル化。
1996平成8年
フォントパッケージ「イワタ書体ライブラリー」PostScriptフォントを発売。引き続きCIDフォント、TrueTypeフォントのフォントパッケージを発売開始。
書体見本帳 PS Ver2.1のカタログ
活字時代からのメイン書体「イワタ新聞書体」を掲載
「毛筆外字1500」TrueType外字フォントセットをイースト(株)と共同開発し、筆耕プリンターなど人名・地名の宛名向けに多く採用される。
毛筆外字1500のパンフレット
1997平成9年
キヤノン(株)が販売する「FontGallery」シリーズにイワタのTrueTypeフォント外字付き4書体が追加されWindows95のDTPユーザーに多く使用される。
「FontGallery」のパンフレット
1998平成10年
(株)イワタエンジニアリングは、URW社(独)のIKARUSシステムの販売代理店となり、同システムの日本での販売、サポートを大手新聞社、印刷会社を対象に行った。またこの頃、読売新聞、朝日新聞、中日新聞などの新聞の文字デジタル化を受託し、新聞紙面の大文字化に参与。
書体見本帳 ポストスクリプト CID Ver3.0のカタログ
IKARUSシステムの編集
1999平成11年
文部科学省 学習指導要領の教育字体に準拠した学参対応フォント(Gフォント)について(株)イワタエンジニアリング、(株)デジックス、(株)モリサワの3社が共同記者会見を行い、各社は保有書体をGフォントに対応させ販売することを発表。
書体見本帳VOL5
文部科学省の学習指導要領に準拠した「学参フォント」を掲載
学参フォントのカタログ画像
  • Mac OS X v10.0
2001平成13年
岩田母型製造所とイワタエンジニアリングが経営統合し株式会社イワタと改称。
書体見本帳VOL5
活字時代からのメイン書体「イワタ明朝体オールド」を掲載
明朝体オールド・ゴシック体オールドのカタログ
イワタ本社
2003平成15年
共同通信社が新たに策定した配信用文字セット「U-PRESS」にイワタ新聞明朝が採用される。またイワタは独自の拡張文字を加えた「イワタU-PRESS 拡張文字セット」を発売。
「新聞書体」のパンフレット
  • JIS X 0213:2004
2004平成16年
書体見本帳VOL8
活字字母を復刻した「弘道軒清朝体」「イワタ宋朝体」を掲載
漫画の吹き出し文字に最適な「イワタアンチック体」を掲載
「弘道軒清朝体」のパンフレット
「イワタ宋朝体」のパンフレット
2006平成18年
「イワタUDフォント」をリリース。
ユニバーサルデザインの視点を持つ書体としてパナソニック株式会社と共同開発。パナソニック指定書体として同社全製品の表示文字として採用される。同製品をイワタUDフォントとして世界初の市販化。
UDフォントカタログ
UDフォントコンセプト
2009平成21年

「イワタUDフォント」シリーズがグッドデザイン賞特別賞『ライフスケープデザイン賞』を受賞

グッドデザイン賞 表彰式
  • 11月:改定常用漢字告示
2010平成22年
2010年改訂新常用漢字表に対応したイワタ学参フォントカタログ
2012平成24年
帳票用に向けて開発されたUDフォント「みんなの文字」をリリース。みんなの文字は東京電機大学の矢口博之准教授監修のもと、「わかりやすさの基準づくり」を推進している一般社団法人ユニバーサル コミュニケーション デザイン協会(UCDA)、「読みやすさプロジェクト」に取り組んでいる電通とイワタの3社が共同開発したフォント。
「みんなの文字Global」のパンフレット
2013平成25年

「朝日書体」をリリース。
使用が朝日新聞社内に限定されていたが、新聞社はじめ多くの出版社やデザイナーからの要望を受け、イワタがメンテナンスの上、独占販売を開始。

「朝日書体」のパンフレット
2014平成26年
アドビとGoogleが協力して開発したオープンソースのPan-CJK書体「源ノ角ゴシック」の開発にイワタがパートナーとして迎えられグリフ拡張に寄与。2017年には「源ノ明朝」を開発。
「源ノ角ゴシック」のパンフレット
2015平成27年
「イワタミンゴ」は電子文書などに求められる「ディスプレイ上での可読性の高さ」を目的に開発された。UDフォントとして幅広い媒体での活用が期待され、2015年度グッドデザイン賞を受賞。
イワタミンゴ
2017平成29年

「イワタUDフォント」シリーズがグッドデザイン賞
ロングライフデザイン賞を受賞

グッドデザイン賞 ロングライフデザイン賞 表彰式
「小春良読体」をリリース。
小さくても読みやすいUDフォントをテーマに共同印刷株式会社は、読みやすさの検査法を開発した東京女子大学の小田浩一教授との共同研究を行い、株式会社イワタの「イワタUDゴシック」をベースに「小春良読体」を開発。
「小春良読体」の製品ジャケット
2018平成30年
『クセを抑えてより読みやすく』
デジタル教材化や教育図書の視認性の向上も視野に入れ『ディスプレイ上での見やすさ』と『より大きくはっきりわかりやすい』を目的に「イワタ学参 新教科書体」を開発。
新教科書体のパンフレット
2020令和2年
創業100周年を迎える
書体見本帳VOL19
創業100周年を迎え、周年記念の見本帳を制作
新書体「イワタ福まるご」「イワタ超明朝U」「イワタ橫太明朝体オールド」を掲載
イワタ福まるご
イワタ超明朝U
イワタ橫太明朝体オールド
東亜重工フォント
漫画家の弐瓶勉氏の原案・監修のもと、同氏の多くの作品にも登場する文字をイワタが新たに開発・製造し、東亜重工製フォント『東亜重工』として製品化。

一文字にかける情熱

この映像は2001年に制作したものです。

100年に渡って制作された、文字遺産とも言える
30万字以上にのぼる活字用の字母は
現在、当社に大切に保管されています。
これからもイワタは書体の可能性を追求し個性豊かで高品質な
製品を提供し続けて参ります。